原作:藤田ミツ
復刻提案:渡邉みどり
構成:高木香織
単行本: 242ページ
出版社: 講談社 (2019/5/30)
言語: 日本語
作品紹介
『古事記』を子供向けに書き直した本。
日本神話を子供たちにと藤田ミツさんが書かれた作品を、渡邊みどりさんにより復刻されたものです。
渡邊さんが皇室の取材で浩宮様(令和天皇)のお部屋を拝見した際に、本棚に見つけ、ご自身も幼い頃読んで大事にしていた本で、戦後の混乱に紛失した事を思い出したそうです。
その後神田の古本屋さんに探して貰って、再び出会った思い出の本だそうです。
そんな経緯を経て、こうして令和に新たに復刻されたのがこの作品。
子供向けに単語毎にスペースを設け区切られていたり、神様の名前以外はひらがなを使用して書かれているなど、小さいお子さんにも馴染みやすい作りになっています。
表紙も藤田ミツさんの頃のものを再現されている事も、良かったと思いますし、表紙を開くと国づくりをしていた頃の日本の地図があるのも、とても素敵です。
感想
とあるご縁から読ませて頂いた本。
そして読むことが出来て本当に良かったと思えた本です。
もし、この世界に神様がいるとするならば。
オタクなお話になりますが、日本神話をモチーフにした作品って、結構ありますよね?
私の場合アニメより乙女ゲームが主なのですが、そんな特殊なジャンル限定で語らせて頂いても、日本神話モチーフの作品には何度も出会っているのです。
イザナギが黄泉の国へ行ったイザナミを助けに行った物語。
そのシーンを読んだ時に、『もし、この世界に神様がいるとするならば。』のシーンと重なり、大変感動しました。
作品の名前から、神話に関連している事は分かりましたし、イザナギとイザナミが出ているので、神話のどこかのシーンが出ているのかな?とは思っていました。
でも詳しく神話を知らなかったため、プレイ当時は分からなかったのですが、イザナミを待ちきれずに探しに行ってしまったイザナギが、追いかけられてしまうシーンは、ゲーム内でも見事に再現されていたのだな…と感動しました。
だから惜しまれます。
もっと早く出会っていたら…と。
遙かなる時空の中で4
残念ながらこの記事を書いている今(2019年8月)、PSPのソフトが最新の『遙かなる時空の中で4』。
こちらも日本神話の世界がモチーフになっています。
この『かみさまのおはなし』では、橿原宮がどの様に出来たか?と言う事も書かれていました。
ゲームの中で何度も歩きまわったあの宮が、大八島の国から悪者を討伐する戦いで、神倭伊波礼琵古命(かむやまといわれひのみこと)…後の神武天皇が弓を突き立てたその弓に、金のとびが止まり、そのとびが翼をはためかせる度に雷の様な金色に光が出て、敵はそれに驚き降参し、大八島の国から悪者が居なくなって安心して立てた宮だと言う事を知りました。
プレイ時はそんな知識もなく、何となく駆け回ってしまいましたが、今プレイしたら、神話を学べた事でもっと深く楽しめるのだろうな…と思います。
PSPまでしかない作品なので、Switch移植も検討して頂けたらいいなぁ…と、今回この本を読んでまた思ってしまいました。
神々の悪戯
こちらは日本神話だけではなく、ギリシャ神話や北欧神話なども関係していますが、『神々の悪戯』をプレイした時に思ったのです。
日本人でありながら、ギリシャ神話や北欧神話以上に、日本神話にご縁がなかったんだなと。
それはアメリカにホームステイした時に、日本人でありながら、私は日本に対する理解が浅いし、知識が少ないなと実感したのととても似ています。
今回スサノオの事が書かれていて、スサノオが暴れん坊で困っていたお話を読み、『神々の悪戯』でもそのことに触れていたのを思い出しました。
あの時はよく理解出来なかったその出来事も、今ならちゃんと理解できる気がします。
絵本を読む様に
もっと小さい頃から親しみたかったなと思いました。
このように子供向けに日本神話が作られているのなら、私が幼い頃に簡単に触れられたかは分かりませんが、もっと幼いうちから触れていたら、大人になった今、日本神話への理解が深まっていただろうにと。
建国記念の日に関しても、全く理解していないまま、祝日で休みで有難いなと言うくらいでした。
今回神武天皇が橿原宮を建てその当時の1月1日に国が出来たお祝いをした事を、この本を通して知りました。
その1月1日が現在の暦では、建国記念の日にあたる2月11日なんですね!
そんな事すら知らないまま、ずっと生きてきてしまったことに、今更ながら衝撃を受けましまた。
だからこそ、なぜもっと早くに…と思ってしまいますが、こうしてこの本に出会えた事に感謝の気持ちでいっぱいになります。
過ぎてしまった事を悔やむより、せっかく出会って知る事が出来た神話の世界。
その事を大事にして、今後に活かして行けたらいいなと思いました。
自分に子供はおりませんが、幼稚園に通う甥っ子がいますので、彼に読み聞かせしてあげられたらと考えてます。
幼い頃に絵本を読んでいました。
ママさんたちも絵本を読み聞かせたりしていると思います。
そんな中に、このかみさまのおはなしを入れてみてもいいのではないでしょうか?
そしてママさんたちもそこで神話に触れる事が出来れば、私のようにあの作品って神話モチーフだったのね?と言う発見もあるかも知れません(笑)
言葉のリズム
後書きに言葉のリズムの事が書かれていました。
美智子様が言葉のリズムを大切にされていたと言うお話です。
日本には短歌や俳句のように、美しいリズムがあります。
私は昔からそのリズムがとても好きでした。
けれど普段読む本の中に、そのような心地よいリズムを感じる文章はなかなかありません。
ですが、今回この本でそのリズムを感じる事が出来ました。
心地よいリズムは、人により差があると思います。
私の心地よさが皆さんの心地よさであるか?と言うと、そうではないと思います。
ですので、個人的な感覚の問題でもあると思いますが。
それでも私にとってこの本は、大変心地よいリズムでした。
最初こそ、単語毎に設けられているスペースに慣れず苦戦したり、神さま方の名前が不勉強であるが故に難しかったりしました。
けれどそれらに慣れて来た頃から、大変心地よく文章が流れるように入って来るようになったのです。
全ての人が同じように感じるかは分かりませんが、ぜひこの心地よさを体験して欲しいと思いました。
最後に
子供向けに作られていますので、お子様におススメしたいです。
ですが、お父さんやお母さんもぜひ一緒に楽しんで頂きたいです。
大人も子供も楽しめる神話の本だと思います。
古事記となると、なかなか敷居が高い感じがしますが、この本はお子様向けなので、非常にとっつきやすいところも有り難いです。
自分の国の成り立ちを知る事は、自国を理解する上で大切な事だと思います。
誰でも知っている昔話の要素も、この中に含まれているので、そう言うものを探しながら読むのも楽しいと思います。
知っておいて損のない知識が得られる、読んでおいて損のない本です。
大人の方もぜひお手にとってみて下さい。
これを機に、古事記についても、もっと深めて行きたいと思いました。
そんな素敵なきっかけをありがとうございます。
オススメ度&満足度
オススメ度:★★★★☆
個人的満足度:★★★★★