キム・スヒョン主演のドラマ「太陽を抱く月」の第5話「涙にかすむ月」のネタバレをまとめました。
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呪いの儀式と世子嬪追放
大妃からのヨヌ殺害の依頼。
けれどヨヌはノギョンが守るべき娘。
悩みに悩んだノギョンは、「アリ、どうしたらいいの?」と亡き友に問いかける。
するとノギョンはアリの墓の前にいて、近くの木にリボンが結ばれていた。
そこには「二人工」と書かれていた。
人が2つと工、つまりは「巫」と言う事だ。
その文字の教えに、ヨヌの命を救う方法を思いついたノギョンは、大妃に言われた通りヨヌへと呪術を使った。
札を燃やすともくもくと煙のようなものが現れ、それがヨヌの住まう隠月閣へと向かった。
そうして眠るヨヌの首を締めるのだ。
苦しくて目を覚ましたヨヌ。
助けを求めようと必死に出口へと向かったものの、誰かを呼ぶ前に意識を失った。
この呪術には生贄が必要だった。
利用されたのはミナ王女。
執拗にヨムを求めるその心を、邪悪な術に使われてしまったのだ。
けれど別室でずっと聞こえていたから。
お祖母様が誰をどうしようとしているのかが。
だから体が震えて止まらなかった。
「これでミナ王女の願いは叶いますよ」と祖母は言うけれど、とんでもない事をしてしまったのかも知れない…と。
幼いながらも感じ取っていた。
倒れたヨヌは翌日から原因不明の病に侵されていた。
内医院(ネイウォン)が治療にあたるものの、原因は全く分からない。
呪いなのだから、分かるはずなどない。
原因が分からないから、疫病ではないか?と怪しむ声も。
そうして朝廷での議論の結果、数日見ても様子の変わらないヨヌは追放される事に。
更には病を隠していたとして、父や兄も罪に問われる話まで出てしまったのだ。
彼女はただ世子を好きだっただけなのに。
呪術で病んでいるだけで、彼女も家族も誰も悪くなどないのに。
全て世子のせい
今まで世子が都落ちにして来た師達は、全て外戚の者だった。
その事に大妃は気付いていないものの、吏曹判書は気付いていた。
だから大妃に忠告したのだ。
「世子様は政治を分かっているから、注意して見ていた方がいい」と。
そうしてヨヌが王宮を追われ、隠月閣を後にした日、彼はそれを止める事はおろか、彼女に駆け寄り別れを惜しむ事すら許されなかった。
ただお付きの者達に止められ、泣きながら彼女を見送るだけだった。
そんな自分の無力さに落ち込んでいる彼を大妃が自室へと招いた。
そこで大妃は優しげな表情で、優しげな声音で彼に話す。
世子嬪の事はもう忘れなさい…と。
そう簡単には忘れられないと言う彼に「後は静かに道理に従えばいいのです」と。
そして「あなたが儒生を動かした結果、どうなりましたか?」と彼を責める。
あなたが望まなければ、大提学(テジェハク)の娘は病を発症しても、実家で両親に手厚い看病をして貰えた。
誰にもその事を責められずに。
あなたが望まなければ、ホ文学も今まで通りに師として王宮に通っていたでしょう。
罪に問われる事などなく。
そしてあなたが望まなければ、王が側近の一人を失う事もなかったのです。
全てあなたのせいなのですよ、世子。
優しく響く声であったが、その言葉は刃物のように彼の心を抉った。
兄もいない、ヨヌも追い出された。
ヨムも王宮には通えない今、彼の話を聞いて助けてくれる者は一人も居なかった。
ただ、自責の念に駆られるだけ。
巫病と祝杯
実家へと戻されたヨヌだったが、症状は悪化の一途を辿っていた。
医者に診せても、内臓も脈も異常がないのに苦しんでいるなんて、何かに取り憑かれたようだ…と。
今までこのような症状は見た事がないと言う事だ。
つまりは打つ手がないのだ。
そうして悲嘆にくれる家族の元、ただ弱っていくだけの日々。
そんな彼女の家にノギョンが訪ねて来た。
「神力に導かれてやってきた星宿庁(ソンスチョン)の国巫(クンモ)です」と言うノギョンは、ヨヌの病を『巫病』だと言うのだ。
神降ろしをすれば助けられる…と言われるも、近親者に巫体質の者など居ないと戸惑う父。
ノギョンの話によれば、巫病は治すことが出来ない病で、神降ろしをするしかないと。
他に方法があるとすれば、死をもってその対価を支払う必要があると言う。
だから「私の命を」と言う大提学だったが、「対価を支払うのはお嬢さん自身です」と返されてしまう。
死してもなお治らない病。
死後も苦しみ続ける。
そこから救うには、彼女の死以外にない…と言われても、何とかして助けたいのが親心だろう。
その日はそんな説明を聞き更なる絶望を味わい、ノギョンに返って貰ったのだった。
その頃吏曹判書の家では、彼を慕う臣下達と共に祝杯をあげていた。
吏曹判書は知っていたのだ。
ヨヌに何が起きているのかを。
だから二度とヨヌが王宮へ戻らない事も確信していた。
そんな父達の会話を表で聞いていたポギョンは、後で父に尋ねた。
「ヨヌを殺すのですか」と。
そんな娘に、父は全てを話して聞かせた。
呪いの件は伏せてはいたが、自分たちの思惑のせいでヨヌが死ぬ事になった事は、十分娘に伝わっただろう。
そして娘に「覚悟を決めるのだ」と言う。
「罪悪感など捨て、それでも目指す地位を手に入れる覚悟をせよ」と。
そんな父の言葉に、ポギョンは覚悟を決めたようだった。
自らが嬪宮(ピングン)になる覚悟を。
お忍びの逢瀬
ヨヌが王宮を追われて数日が過ぎた頃、王の元へは世子嬪を廃位に…との陳情が後をたたなくなった。
その陳情に怒りを抑えきれない世子だったが、ヒョンソンが必死に止めるのだ。
耐えて下さい…と。
一人きりの孤独に耐えきれなくなった彼は、武官達の元へと出向いた。
「酷く気分が悪くて、蹴鞠の時の事を思い出したら、余計に気分が悪くなった。あの日の得点王は誰だ?」と。
そうしてヨムや陽明君の親友であるキム・ジェウンを、皆が視線で教えたのだ。
そんなジェウンを伴い、彼も同じ武官の服装に着替え、ヨヌの家へと向かった。
何も出来なかった。
彼女の居場所を守ってやれなかったし、病も治してやれない。
苦しんでいるのに、そばにいる事も叶わない。
まだ年若い彼らだが、本当に慕いあっていたのだ。
そんな世子の愛しい人への想いを汲んだウン(ジェウン)は、無茶な任務であるにも関わらず同行し、友人であるヨムの家へと世子を案内した。
そうして兄のヨムの計らいで人払いをしてもらい、彼はついに病の彼女を見舞う事が出来たのだ。
やつれた彼女の傍に腰を下ろし声をかける。
すると辛いながらも目を開けた彼女が、「幻ではなく、本当に世子様ですか」と尋ねる。
「幻ではない。お前に会いに来た」と言う彼は、かんざしを彼女に贈った。
それは『太陽を抱く月』と彼が呼んでいるかんざした。
古来より王宮では、王を太陽、妃を月に例えていた。
そのかんざしは白い月のような石が、赤い太陽のような石を抱いている事から、彼はそう名付けたのだと教えてくれた。
そうして「私の妃はお前だけだ。早く元気になって、私の元へ来い」と優しく告げる。
その言葉に嘘はない。
臣下がどんなに世子嬪の廃位を願おうとも、王がそれを拒めなかったとしても、彼の心の中では彼女一人なのだ。
彼の妃として相応しい娘は。
かんざしを貰ったヨヌは、彼に今までの事を詫びた。
出会いの日に泥棒と間違った事、彼の気持ちを誤解して、失礼な態度をとった事など。
そして「全て私が悪いのです」と。
兄の生まれの事も彼が悪い訳ではないのに、自分のせいとでも言うように考えていた彼を、彼女はよく知っているから。
だから「何があっても、自責はやめて下さい」と頼むのだ。
大妃は全てが世子のせいだと言った。
けれど彼女はそうは思って居なかった。
だから伝えたのだ。
「世子様に会えて、幸せでした」と。
その言葉に偽りはなかった。
共に居られた時間は、ほんの僅かだったかも知れない。
けれど互いに心を通わせ慕いあった事。
幾度も文を貰った事。
隠月閣の前で語り合った事。
王宮での最初の夜に、二人で見た人形劇の事。
どれも彼女の大切な思い出だ。
その事は、こんな病にかかってしまった今も、何も変わらない。
彼女の中で暖かく、そしてキラキラしている大切な思い出なのだ。
短い逢瀬を終え、王宮へと向かう帰り道。
無口なウンは、けれど世子の心に寄り添ってくれていた。
だからこそ、何事かあれば大問題になる無茶な願いも、こうして叶えてくれたのだ。
そんな彼に感謝の意を述べた世子は、心のうちをはきだした。
「私は一国の世子であるのに何も出来ない。一国の世子であるから何も出来ない」と。
この国の誰よりも強い権力を持ちながら、愛する娘を救う事が出来ない。
この国の世子であるが故に、愛する娘が苦しんでいるのに、側に居る事すら叶わない。
陽明君には羨ましがられる彼の立場。
けれどその世子と言う立場は、彼から大切なものを幾つも奪うものなのかも知れない。
何でも手に入れられるはずなのに、一番欲しいものが手に入らないのだから。
ヨヌを思う者たち
旅に出た陽明君は、ヨヌとの思い出を振り返っていた。
そうして狩で得た獲物を売り、飯屋で腹を満たそうとした所、客の一人が税金が上がる話を持ち出した。
そうして世子嬪が王宮を追い出され別な娘に変わる事や、追い出された世子嬪が瀕死の状態だと噂している。
その言葉に驚いた陽明君は、急ぎ彼女の元へと馬を駆る。
てっきり弟と幸せになるのだと思っていた彼女の思いもよらない不幸に、胸騒ぎが止まらないのだ。
「頼む、どうか間に合ってくれ」と、どうしても一目だけでいい、彼女に会いたいと。
そして妹を案じる兄のヨムは、父により「世子様を支える師なのだから」と病を避けるためにおじの元へ。
その際、ヨヌの付き人をしていたソルに「ヨヌを頼む」と託して行った。
頼まれたソルは、ヨムの頼まれるまでもなくヨヌの側にずっとついているつもりだった。
けれどヨヌの父により、他の邸で仕えるようにと言われてしまったのだ。
それはソルの事を考えての言葉だったのだろうが、ソルにはショックな出来事で、何か粗相をしてしまったのなら改めますから…と食い下がった。
そんなソルだったが、大提学に「ヨヌが元気になったら、どこにいてもすぐ呼び戻すから、また仲良くしてやってくれ」と言われてしまった。
その後大提学は、再度ノギョンに会い、薬を貰っていた。
煎じて飲めば、ヨヌが死して救われると言う薬。
それだけが巫病から魂を救う術なのだと言われて。
それでも自らの手で娘の人生を終わらせるなど、親にとってはこの上なく辛い決断。
薬を貰ったものの、使えずにいた。
けれどヨヌの体調か著しく悪化し、呼吸もままならない上に吐血するようになってしまった。
とても苦しんでいた。
だから父は決意したのだ。
娘を苦しみから救う決意を。
最期の逢瀬
翌早朝、父は娘の為の煎じ薬を作っていた。
それに気づいたヨヌは、最後の力を振り絞り手紙を認めた。
世子に宛てたものだ。
ヨヌはノギョンと父の会話を聞いており、自分は助からない事、巫病である事、煎じ薬を飲めば命を落とすが死後救われる事を知っていた。
だから父が部屋に来れば、そこで自分の人生に幕が降りると理解していた。
それでも愛おしい人に会いたい。
彼が恋しい。
だから彼女は必死に筆を取った。
世子に最期の言葉を残すために。
そんな彼女の想いからだろうか。
彼女は世子の夢の中に。
夢の中では、彼の部屋で自分が贈った鉢植えを眺めていた。
すると彼が目を覚まし、「治ったのか?」と嬉しそうに問いかける。
だから彼に「世子様に鉢植えを贈った意味をご存知ですか?」と尋ねた。
以前彼女から聞いている彼は「以前そなたから聞いたであろう」と。
だから彼女は答えたのだ。
これには裏の意味があります。
鉢植えを贈ることで、何が育つのだろう?と興味を持って貰いたかった。
そうすれば、世子様から文を頂けると思ったのです。
彼女の言葉に嬉しそうに微笑んだ彼は「私からの文が欲しかったのか?ならば最初からそう言えばいいのに」と満足気だ。
そんな彼に彼女は「お元気で」と一言残して消えてしまう。
するとそこで夢は終わり、目覚めた世子。
そうして夢の中の出来事を思うのだった。
その頃ヨヌは世子への手紙を書き終え、それを隠し、再び布団に入り寝たふりをした。
そこに煎じ薬を手にした父がやってきた。
飲ませるのを躊躇い、涙ながらに「そなたには不憫な思いをさせた。もっと本を読ませてやればよかった」と思い出話を始める。
そんな父の様子から、父が躊躇っている事を察した娘は「お父様、薬を下さい」と自ら薬をねだった。
そうして「もう楽になりたいです」と告げた。
それはきっと彼女の優しさ。
助からない命だと知り、せめて父の罪悪感が薄らぐように、自らが楽になる事を望んだのだろう。
父が飲ませたのではない。
娘が欲したのだ…と言う事実により。
薬を飲んだ彼女は父の胸の中で、彼からもらった太陽を抱く月の簪を手に、安らかに旅立った。
涙を流しながら。
安らかではある。
けれどどれほどの未練があっただろう。
夢見た未来を全て手放して、彼女は一人旅立ったのだ。
そうして彼女の死は世子にも知らされた。
本日家族だけでしめやかに葬儀が…と聞いた彼は、部屋を出た。
会いに行こうと思ったのだろう。
まだまだ伝えたい事はたくさんあった。
これからいくらでも伝えられると思っていた。
婚礼もこれからなのだ、時間はたっぷりあると思っていた。
けれどその未来の二人の時間は、無残にも全て奪われてしまった。
もう二度と会う事は叶わない。
妻として迎えることも、語り合う事も、笑い合う事も。